らくがきドラマ本ですが、先日ようやく印刷会社に入稿。
そこは同人誌印刷では大阪でも有名な出版社だったのですが
全然わけのわかってない人にも
親切丁寧に対応してくれました。
受付には、参考のためにたくさんの同人誌の見本が置いてありました。
どれもプロみたいにすごく綺麗に描かれていて、
印刷もとても計算された色遣いや紙質。
しかもどうやら私の一冊千円という値段設定より安そう。
一冊千円で60部売れてやっと印刷代くらいなのに
フルカラー表紙とかで同人誌描いてる人はたいへんだなぁと思いました。
きっとたくさん売れるから値段を抑えてもやっていけるんですね。すごい・・。
私がちょっとかじった高校生くらいのときは
コミケも近所の高校の体育館や図書館でノンビリ行われていたものですが
いまどきは大きなイベント会場を貸し切りで、何万人と集まるすごい世界なんですよね。
そりゃもう連日必死で描いた原稿ではありますが
あまりの素人っぽさ、素朴さに
予約いただいているお客様に申し訳ない気がしてきまして
せめて表紙の材質とインクのランクは上げました。
たくさんオマケのカットを増やして、
らくがきならぬマジがきドラマになってますので許してください。
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とつぜん始まるらくがきドラマ。
といっても今回のは新作ではありません。
2009年に書いたらくがきドラマ第一話が
なりゆきで連載になったためストーリーになっていなかったので
らくがきドラマ書籍化にあわせて、加筆改稿したものです。
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とある町の、大きな古木のうろのなかに
夕刻になると、ちいさな灯りがひっそりともります。
バー「とまり木」。
「マスター、ネクトンをロックで・・・」
「はい。いい赤粟の穂が入っていますが、どうされますか?」
「じゃ、それも。」
「あ、お客さん。」
「ん?」
「カウンターかじりはご遠慮ください。」
「ごめんごめんマスター、
ちょっとクチバシが伸びていたから・・・。」
「ベタファームももらおうかしらぁ~。」
「お客さん、ビタミンのとりすぎですよ。」
「そうね~、この前も検査にひっかかったわ。」
「あ、キバちゃん」
「よっ、待ってました!」
「・・・キバちゃんって誰?」
「オーストラリア帰りの「流し」よ。
あちこちの酒場を巡って、客の歌にあわせたり
リクエストに応じてギターを弾くの。」
「ふ~ん。」
「キバちゃんいらっしゃい。・・・なにかあった?」
「えっ?マスター、べつになにもねえよ。」
「ふ~ん・・・そうかな?」
キバちゃんはあわてて目線をそらしました。
「・・・でもあいつ、ちょっと短気だって聞いたぜ。
この前も派手な喧嘩したって。」
「誰と?」
「「鐘かぶりのポン」と「半目のピヨちん」さ。」
数日前のことでした。
夜の街で、キバちゃんとすれちがった「鐘かぶりのポン」が
いいがかりをつけたのです。
「こらキバ野郎!下手なカトルボーンなんか弾きやがって。
お前のせいで仕事はあがったりや!」
「鐘かぶりのポン」の仕事は、酔ったインコ客の頭に
好みの鐘をかぶせてやることです。
ただ、報酬として、法外な蕎麦の実を要求するのでたちが悪い。
バーの常連客の鼻つまみ者なのです。
「ほんまやでポン兄弟。
こいつキャアキャア騒がれて、調子にのっとるで!」
チンピラ仲間の「半目のピヨちん」も加勢。
「なんだと・・・やるか?」
「おう、ここは迷惑や。そこのほわ毛公園に行くで!」
「望むところだ。逃げるなよ。」
3羽はほわ毛公園に着きました。
もう物見高い見物人たちが彼らを囲んでいます。
「ほなポン兄弟、俺からいくで!」
「おう、頼んだでピヨちん。」
「ギャギャギャ!ポンちゃんはう・ろ・こ!
おぴ~ちゃんもう・ろ・こ!」
「うわっ、こらピヨちん、俺の頭の鐘に萌えてどうすんねや!」
「すまん兄弟、俺、光りもんに弱いんや。」
「お前らのっけから仲間割れか。
じゃ、俺からいくぜっ!!」
キバちゃんの冠羽が全開に・・・・!
「やめんねっ!」ザバッ!
公園の向かいの、桃の古木にある
割烹「桃色鳥類」のおかみ、ピーチ姐さん。
防火用水のバケツの水を一同に浴びせたのです。
「うわっ、なにすんねん!」
「しゃーしかね!店の前で喧嘩ば、せんとよ!」「ううっ、しゃあないな。
こらキバ野郎、今にみとれよ!」
「鐘かぶりのポン」と「半目のピヨちん」は
ののしりながら逃げていきました。
「たいへんね、ピーチ。」
「あら、みとったとね?」
誰もいなくなった店の前に
ピーチの幼馴染、ぴく美が立っていました。
つづく!