スーパーに行くと、もうラッキョウが出ていました。買いに行かなくちゃ。
私が作るのはラッキョウ漬けくらい(しかも去年から始めたばかり)なのですが
いろんな手作りつけものや常備菜をつかいこなすスーパー主婦には憧れます。
ダンナの母が料理上手で、実に研究熱心。料理本は何百冊も持っています。
つくるのはともかく、本を読むのは好きなので(爆)
帰省のたびに母所蔵の古い料理本を
すこしずつ読ませてもらうのが楽しみです。
料理本には、その当時の食べ物やうつわの流行や
手に入る材料や道具の違いがあって、文化史としてみても面白いものがあります。
昭和30年代くらいの本になると、
泡立て器がなければ、割りばしを数本使ってメレンゲを作りましょうとか
茶筒を使ってアイスクリームをつくりましょうとか、代用品が面白い。
バブルの時代の料理本は写真がはなやかで、
出てくる先生や生徒のまゆげが濃くて口紅がケバい。(笑)
ダンナの母の得意料理のひとつに、「鬼ユズの皮の砂糖煮」というのがありまして
ソフトボールほどもある大きなユズの皮の内側の白いふわふわした部分を作ってつくる
オレンジピールのようなものです。
これがもう、あまりにも美味しいので、作り方を教わろうと思ったら
本棚から取り出してきてくれたのがこの本です。
「私の保存食ノート」佐藤雅子
著者の佐藤雅子さんは明治生まれで
政治家の佐藤達夫さんの奥様。
料理上手なお母様と厳しいおしゅうとめさんにしつけられ
保存食をはじめとするさまざまな料理を会得。
この本のなかの、「夏みかんの皮の砂糖煮」が
母の絶品ピールのレシピでした。
ただ、母は私に、もっとひまになってから作りなさいと笑います。
というのは、この砂糖煮は、けっしてお箸などでかき混ぜず、
ただ弱火で休まず鍋をふりつづけなくてはできません。
これをつくるあいだ、6時間!!ほかのことは何もできないのです。
佐藤雅子さんはこの著書のなかで
それぞれの家庭にあわせていろいろとアレンジすることを勧めていますが
時間短縮のための短絡的な方法は失敗につながるとやんわりとたしなめています。
すぐに面倒がって簡単なやりかたを探そうとしてしまいますが
まあ、そうするとそれなりのものしかできないということですね。^^;
また、佐藤さんはたいへん器用な人で、
趣味の木彫や彫金も、くろうとはだしだったということで
佐藤さんオリジナルの木べらが面白い。
、
シチューのルーがあまり好きでないご主人のために
肉だけとれるように木べらの中央に透かし彫りをいれたもの。
また、木べらの外周がギザギザとなっていて
ケーキの上にクリームを置いてひとなですると美しい模様がつくように工夫されたもの。
マッシュポテトにも最適だということです。なるほど!
また、飛行機のプロペラから思いついたということですが、表面に波型のうねりがついていて
かきまわしやすくなっているものもあります。
戦中戦後は焼け跡をたがやして野菜をつくり、
毒舌で厳しいしゅうとめ、しゅうとと同居し、料理にうるさく口を出すダンナさまに仕え。
昔の家事は今よりもっと時間もかかったでしょうに
こういう時間と心の余裕はどこから生まれるのかなと感心しきりです。
「お料理は心豊かに手まめにするもの」「心静かに台所に向かう」
折に触れこの本のなかで出てくる言葉です。
なんだか佐藤さんの姿が見えるようで納得します。
この方のお母さんのレシピが本文中に出てくるのですが
じつに大正時代の風格を感じる文章で、それもまたこの本の面白い所です。
たとえばジャムの作り方(ジャミー・ジェレー概則)などがあり、
NHKの朝の連ドラ「ごちそうさん」はこのレシピを参考にしたのでは?と思います。
また、うつわにこだわりがあり、モノクロ写真なのが残念ですが、
つぼ類は朝鮮白磁などがさりげなく使われていてなかなか素敵なのです。
ダンナの母愛用の本なので、さすがにもらうことはしませんでしたが
たまたま雑貨屋の本棚で、この本がまた再版されて並んでいたのを見つけました。
私の持っているのが14刷目ですから、すごいロングセラーですね。
たぶんダンナのお母さんが6時間鍋を振ってくださるあいだは
チャレンジしないと思いますが(だめじゃん)
いつか・・・^^;
どうしても食べたくなったときのために、本を買いました。
根性のある方はぜひチャレンジしてみてください。
本当に、素晴らしく美味しいピールです!