先日京都で開催した「世界塔ふたたび」展の相棒、タナベサオリさん。
豊富なウェブ知識と天性の描画力を融合させたイラストや動画をつくる作家で
私の尊敬する友人のひとりです。
私は最近イラストの仕事が増えてきたので、展覧会場でいろいろと相談していたのですが
趣味でイラストを描くのと、プロが描くことの大きな違いは
求められた絵を、いつ言われても
一定のタッチで描けることだと言われたのが印象に残っています。
わりとそのへんテキトーで、
前に描いた絵のように描いてと言われても
同じようには描かないことが多かったので、反省しました。
タナベさんは、作家としては
旅する猫を題材にした詩情あふれる動画作品やイラストを描いていますが
他にイラストレーターとして、お酒のラベルのデザインとか
なんと、今はやりのご当地ゆるキャラまでデザインしているのです。
滋賀県草津市の渋川地区まちづくり協議会のゆるキャラ
「しぶはなちゃん」
これは、渋川地区の伊砂砂神社の春の例大祭のときの写真です。
しぶはなちゃんの名前の由来は、
渋川学区の「しぶ」、花踊りの「はな」。
渋川には「古式渋川花踊」(滋賀県選択無形民俗文化財)という踊りがあるのですが
しぶはなちゃんはその踊り子をモチーフにしています。
草津は、今も陣屋の建物が残っていますが
東海道の宿場町として発展した、歴史のある町です。
タナベさんは、しぶはなちゃんを形作るアイテムや色をデザインするとき、
伊砂砂神社の宮司さんや、花踊り保存会の方にお話しを伺ったり
保存されている花踊りの資料を読み解きながら作っていったそうです。
京都から電車ですぐで、駅前に大規模な複合施設があり、便利なのに
すぐそばに琵琶湖があり、風光明媚な渋川地区。
若い家族に人気のあるベッドタウンとして発展しています。
地元出身ではないこどもたちが、ゆるキャラとしてのしぶはなちゃんを入口にして
しぶはなちゃんの背景にある、自分たちの住む町の伝統に興味をもつかもしれません。
こどもが見てもおとなが見ても、自然に可愛いと感じる、しぶはなちゃん。
例大祭のビデオがyoutubeでもアップロードされていますが
みんなに愛されている様子が伝わってきます。→
youtube
ちょうど、草津でタナベさんが展覧会をして、見に行ったときに
地元のまちづくり協議会のみなさんとタナベさんが、
しぶはなちゃんの人形のデザインチェックしているところに居合わせました。
ひこにゃんやくまモンしかりですが、
ゆるキャラって結構、着ぐるみ人形の出来がいいかどうかというのが、
愛されるキャラになれるかの大きなポイントだと思います。
人形作りの職人さんが、絵のしぶはなちゃんを見て起こした図面は、
当然細かい部分で
職人さんが、こういうことかな?とイメージした形がはいるわけです。
陣羽織のスリットの加減、ちょっとしたふくらみの角度。
そこをタナベさんが原画を描いた立場から、細かくチェック。
このぐらいと見過ごしてしまうような細かいところでも
全体に大きな影響を与えることがあります。
直した個所を比べて、なるほど、さすが的確な指摘だなと
興味しんしんで見ていました。
全国にたくさんできたご当地キャラ。
そんなにいらんだろうと批判されることもありますね。
でもそのとき、渋川地区のまちづくり協議会の方々とも少しお話しをして
やはり町で何かしようという時に
こういう、世代をこえてみんなをつなぐ可愛いシンボルのようなものが
あるとないとでは全然違うんだろうなとあらためて思いました。
タナベさんが心をこめてデザインしたしぶはなちゃんは、
渋川地区の街角で、こどもたちの交通安全にも一役かっているようですよ。
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