インドネシアの在留邦人向けの情報誌「南極星」がリニューアル。
インドネシアと日本、双方向に情報を発信する、新しい雑誌
「+62」 (←インドネシアに電話するときの国別番号です)
創刊です。
新雑誌に、私が去年の夏まつりで発表した
らくがきドラマ「コザクラ剣客商売」の続編
「インコ侍」
を連載することになりました。
ただ、ポ兵衛、お茶瑠、茶居治郎 という名前が、
インドネシア人にはとても発音しにくいということで、
小兵衛、小春、小太郎
とそれぞれ名前を変えました。
そして、許可をいただき、今年の夏まつりでは
この「インコ侍」を、まだインドネシアで発表していないところまで
先行公開していいということになりました。
では、「インコ侍」お楽しみください。
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老中・田沼鳥次の権勢はなやかなりし 鳥江戸。
「コザクラ無茶苦茶流」の剣客、小桜小兵衛とその息子小太郎は
連日きびしい稽古に明け暮れていた。
「鋭(えい)」
「応(おう)」
「小太郎、もっと丹田(腹)にちからをいれて打ち込むのじゃ!」
「きええええええええい!」
小太郎が顔を真っ赤にして腹に力をこめた、その刹那。
「ぼうん」大きな音が響き、あたりに気をうしなわんばかりの屁の匂いがたちこめた。
「や、や、小太郎。力を入れるところが違うておろう・・・」
強烈な匂いに、さしもの剣豪小兵衛も倒れこみ、うめいた。
「父上、申し訳ござらぬ。」
「ううっ、よいから早う戸を開けはなて。だいたいな、おまえは食い意地が張りすぎる。
ゴホッ、早う、厠へ行ってまいれ!」
小太郎は廊下へ追い出された。
「いやはや、剣術の道はけわしいのう。」
厠から戻った小太郎が台所の横を通ると、えもいわれぬ香ばしい香りが鼻をくすぐった。
「や、だんごではないか。」
誰もいないのをたしかめ、小太郎がだんごの皿に手をのばすと・・・
「くせものめ!」
目にもとまらぬ早業でふりおろされたおたまで、小太郎は手羽先をしたたかに打たれた。
「ピギャーッ!」
「それはヒエのだんごだよう。小太郎さんは、粟のだんごのほうがよいのだろう?」
「かたじけない、母上。」
居間に行き、粟だんごをほおばりながら、小太郎はためいきをついた。
「戦国の世ならいざしらず、
この泰平の世では、剣術の腕をみがくことにどれほどの意味があるのだろう。
父上はまだ早いというが、わたしは広い世間をわたりあるき、もっとうまいものを存分に、
いや、自分の腕をためしてみたいのだ。」
そのときであった。
小太郎の前の文机のひきだしから、
見たことのない大きな鳥の化け物のようなものが飛び出てきたではないか。
「うわあああああ、何だおまえは!」
つづく
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追伸
今回の夏まつりの抽選販売で当選された方には、もれなく
去年の夏まつりで好評だった
らくがきドラマ「コザクラ剣客商売」が一挙掲載された
南極星3月号をさしあげます。(お送りする荷物に同梱します)
今回の抽選用の作品は全部で26点ですが
本は35冊ほどありますので、
抽選にはずれて、iichiで20日以降に作品をお買い上げくださった方のなかから
希望された方には本を同梱いたします。
希望者多数の場合は抽選します。
この本で面白いのは、コザクラ剣客商売の扉ページの前の
「東京不動産」という不動産会社の社長さんが、
池波正太郎の「剣客商売」を読んでいるところ。(笑)
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