インドネシアのバティック工房、スタジオパチェの賀集由美子さんが
新型コロナウィルスによる持病の悪化でお亡くなりになって9ヶ月。
賀集さんと親交のあった、インドネシア各地方在住の邦人、
インドネシアのほかのバティック工房、
賀集さんの師匠で日本でいえば人間国宝みたいな方や、
海外各地からも有志が参加して、
「ペン子ちゃんトリビュート展」が、
本日3月12日から23日まで
ジャカルタの「アルンアルン」にて開催されます。
広い会場には、賀集さんの作品が飾られ、中央には仕事机が再現されており、
会場の様子はツイッターやインスタグラムなどでも配信されるそうです。
ペンギンアート展つながりで、
10年ほど前から、様々な作品をお互いにコラボさせてもらってきた私も
日本から、絵画と陶作品を送りました。
「アヤムの器」
この雑誌版のplus62の表紙の赤い鶏(アヤム)柄のうつわは、東南アジア各地の屋台などで広く使われているもので、おそらく中国の移民が、昔の赤絵という磁器に使われていたモチーフを大衆向けに思い切ってデザインを単純化したものと思われます。賀集さんがお好きで集めておられたと聞き、ペン子ちゃんと赤い鶏を遊ばせてみました。
賀集さんは、ほかのバティック工房が勝手にペン子ちゃんのモチーフを使って商品を作っても、逆にそれを楽しんでいました。
もし、ペンギン柄が賀集さん以後、インドネシアの工房で作られ、バティックの伝統文様のひとつになっていくようなことがあれば中国の赤絵の鶏のように、賀集さんの仕事は永遠の命を得るのかもしれません。
「賀集さんみたいな盆栽」
賀集さんと親交のあった、イラストレーターの本多トモコさんが、ペンギンマーケットというイベントで賀集さんと一緒に活動していた皆さんにSNSでこのトリビュート展への参加を呼びかけたとき、「賀集さんみたいな盆栽とか、ラブレターとか、制限はありません」と呼びかけていたと聞いて、なんで盆栽⁈と大笑いしたのですが、結局誰も盆栽を描いてないみたいなので、描いてみました。
真ん中が賀集さんみたいな盆栽です。暑がりなので、首から手ぬぐいを巻いて、左手にはチャンティン、愛用のロットリング、最近はまって私も器を作らせてもらった抹茶。右手には大好きなサッカーのボール、大好きなiPad。
右手のペン子ちゃんたちは、パチェ工房の職人の皆さんや愛犬たち。美味しいもの大好きだった賀集さんは、料理上手の職人さんナニさんとみんなの昼ごはんやおやつを手作りされてました。賀集さんがお出かけされていたとき、職人さんたちがU字ブロックでサテ(焼き鳥)を作っていたというツイートが面白くて忘れられないので、描いときました。
真ん中下は、私もインドネシアに行った時にコラボしてもらったインドラマユの凄腕ロウ描き職人、アアットさんと、今回のトリビュート展を中心となって進めた、plus62の編集長、池田華子さん。
左下は、いっぱい作品やお土産を詰めて、日本とインドネシアを往復した賀集さんのキャリーバッグ。取っ手にかかっているのは、道中の乗り物で腰痛防止に腰に巻く腰枕。腕を骨折された時も、腕を吊るものを包帯ではなくバティックで作られたり、思いついたら即、形にする仕事の早い方でした。
盆栽のすぐ左に寄り添う猫は、パートナーのコマールさん。たいへん仲の良いご夫婦でしたが、賀集さんの後を追うように亡くなってしまわれました。横のペンギンは娘さん。パチェ工房の跡地に、素敵な施設を作られる計画を進めておられるそうです。
左上にあるのは日本を象徴する富士山。富士の見えるところに眠っておられるというご両親と日本にいて賀集さんの創作活動を支え、研鑽しあってきたお友達をペンギンで描いてみました。
人を盆栽にたとえるなんて面白いと思って描いた絵でしたが、描いてみたらなかなか良い画題でした。
バティックには「生命樹」という伝統柄があります。今回のトリビュート展会場でも、賀集さんが描いた大作が展示されています。インドネシアに根を下ろし、多くの方たちに喜びを与えたその生き方はまさに生命樹のようであったと思います。
この展覧会は、いわゆる追悼展というよりは、楽しいことが大好きだった賀集さんに「誰が一番ウケるか」というノリで作品を作ることになっているので、絶対賀集さんにウケる自信があります!
なのになぜいらっしゃらないのか。悲しみと、ほろ苦い後悔のような想いが残ります。