最近古民家を直したカフェは街じゅうにあふれています。
でもなんというかわざとらしい造りの店も少なくないです。
ここは古く美しいものへの尊敬と愛情で作られたところ。
それが第一印象。
入ってすぐ、オーナーの横山さんが出迎えてくださいました。
おだやかで上品な女性。
私は気になるアーティスト「ひさの」さんの作品が
一年前ここで展示されていたのを知っていたので
その作家さんについて聞きました。
知らなかったのですが、その作家さんは
去年の作品展のあと亡くなられたということでした。
もう見られないのか・・・
と思ったところ、作品がここにあるので見てほしいと横山さん。
来てよかった!

ひさのさんの作品は、ごく小さなキューピー人形に
ごく細い糸を着せながら編み込むというもの。
大きさは・・カードを置いて比較しましょうか。

これは「まろ」とオーナーさんが呼んでる人形。
オーガンジーのかぶりものが烏帽子のようです。
よく見ると中に巻き貝が仕込んであるのわかりますか。
着せ替えキューピー自体は昔から手芸やにいけばキットもあり、
普通に手芸として楽しむ方も多いです。
でもこのキューピーのおしゃれさは普通じゃない。

頭の上の尖塔のようなビーズの飾りの細かさ、色遣いの美しさ。

おしりには貝がら!
さんごののってるのもあります。

これは顔が大人っぽいので、詰め物をして足を長くして編み込んだもの。
さてみなさん。このアーティストさんはどんな方だと思いますか。
彼女は100歳近い女性なのです。
90歳からキューピーの人形づくりを始め
98歳で亡くなるちょっと前まで作品を作り続けました。
これが最後の作品です。

思いっきりはじけてるでしょう。(笑)
これがその前の作品。
携帯の写真ではうまく表現できていませんが
素晴らしい細工なのです。素材のひとつひとつまでこだわって
丁寧に作る静かな情熱がつたわってくるような作品なのです。
ひさのさんは明治生まれ。オーナーさんのお祖母様。
まったく芸術とは無縁な人生を歩まれました。
たいへんな苦労をのりこえてきた方だそうです。
ただ、洋服などはこだわりがあり、
オーナーの弟さんのTシャツを分解して他の素材とくみあわせたりして
自分の洋服をつくられたそうです。
またそれがおそろしくお洒落だったりする。
環境さえ違えば、ひさのさんはファッションデザイナーになっていたかもしれません。
アーティスト魂。
これがアートだという気負いもなく
ただただ心の求めるままに
純粋に表現した世界に感動を覚えました。
ひさのさんは病院にかかることもなく
ある日、いつものように過ごして床につき
朝がきても目覚めることはなかったそうです。
このお店、
「好日居」。
以前は建築関係のお仕事をしていた横山さんが
30年近く空き家だったこの家に「呼ばれて」
改築をし、お店をオープンして一年。
場所がわかりにくいこともあり
ここは観光客がくることもなく
私がいたあいだも切れ間はないものの一人づつ
ここを探してくるお客さんがゆっくり静寂を楽しみにくるような感じ。

これは「岩茶」という中国茶。ライチのようなほのかな香りがして
とても美味しかった。3煎目まで沸かしたてのお湯を入れてもらい、
風味の変化を楽しむことができます。
手作りケーキも美味しかった・・。
ここは、教えたいけど教えたくない場所。
できたらひとりで。美術館に行くついでにでも
ゆっくりお茶と静かな大人の時間を楽しみにきてほしい。
場所は神宮道の小倉山荘の角を東にはいり、
山崎書店のななめ向かいです。
あんまり詳しく教えないでごめんなさい。
探す気持ちのある方だけ・・ぜひ。
好日居をあとにして
ようやく今日京都に来た主目的、松島さんの個展会場に行きました。
前は奥のせまい部屋でしたが
今回は広い部屋で、新作も大きいものが多く
新聞からも取材を受けて
ますますのってきている感じで嬉しかったです。
私もがんばらにゃ~!